北海道の出汁といえば、「昆布」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかしここは、新鮮な海の幸の宝庫。北海道の出汁の素材は昆布だけではないのです。
この記事では、「鮭」や「カジカ」など、北海道ならではの出汁の魅力をお伝えします。出汁を味わえる郷土料理や、北海道産の出汁を手軽に楽しめる、おすすめの出汁も紹介しますよ!
この記事から、北海道の出汁の奥深さが伝わったら幸いです。ぜひ、出汁から溢れ出す素材の旨味を想像しながら、読んでみてください。
北海道の出汁の特徴
北海道の出汁の種類は、かつお節、昆布、煮干しが一般的です。さっぱりとしたクセのない出汁が特徴です。特に昆布の出汁が有名で、北海道の郷土料理である「石狩鍋」や「三平汁」にも使われています。
その他にも、鮭、花咲蟹、ほたて、海老が出汁に使われることもあります。これらは全て、北海道が漁獲量トップクラスを誇るものです。
このように、魚介系の出汁が豊富にあるのは、新鮮な魚介類が獲れる北海道ならではの魅力と言えるでしょう。
北海道で獲れる出汁の素材
ここでは、北海道で獲れる出汁の素材として「昆布」と「鮭」をご紹介します。
昆布
国内の昆布のなんと9割は、北海道で漁獲されています。北海道では数種類の昆布が獲れ、産地によって出汁の味が変わるのも、魅力の一つです。ここでは、一般的な昆布出汁についてお伝えしたあと、北海道の各地で獲れる4つのだし昆布をご紹介します。
画像引用元:北海道のこんぶ|北海道ぎょれん
昆布出汁について
昆布だしは日本三大出汁の一つです。旨味の元となる「グルタミン酸」が豊富に含まれており、煮物や鍋料理だけでなく、酢の物、和え物にも使われます。あっさり上品な味わいで、昆布の種類によって、甘味や塩気が感じられます。
また、昆布は、煮干しやかつおに比べて簡単に出汁が取れて、どんな料理にも合わせやすいのが特徴です。
昆布の主な栄養素は「カルシウム」「ミネラル」「アルギン酸」「フコダイン」です。「アルギン酸」は、体内の余分な塩を排出する働きを持っています。「フコダイン」は昆布のヌメリ成分で、水溶性食物繊維の一種です。
このように昆布出汁は扱いやすく、健康にも良い出汁なのです。
真昆布
函館を中心に松前から室蘭までの沿岸で獲れる「真昆布」は、昆布の中でも最高級品と言われています。上品な香りと旨味、甘味のある澄んだ出汁が特徴です。大阪を中心とした関西地方で人気の出汁昆布です。
利尻昆布
「利尻昆布」は、利尻・礼文・稚内沿岸で獲れる昆布です。「真昆布」「羅臼昆布」に次ぐ高級品で、クセのない香りと旨味の強い出汁がとれます。透明で風味の良い出汁がとれるため、見た目も重要な懐石料理に使われます。
羅臼昆布
名前のとおり、羅臼沿岸で獲れる「羅臼昆布」は、「オニコンブ」とも呼ばれています。「真昆布」と並ぶ高級品で、風味も旨味も強く、黄色味を帯びた濃厚な出汁が取れます。関東地方で人気の出汁昆布です。
日高昆布
日高沿岸で獲れる「日高昆布」は、磯の香りが強めで、それ以外の風味や旨味が弱い昆布です。日高昆布は出汁用だけでなく、食用としても使われます。柔らかく煮える特徴をいかし、佃煮やおでんの具として使われることが多い昆布です。
鮭
北海道では、鮭も出汁の素材として使われます。鮭の水揚げ量日本トップを誇る、北海道ならではの出汁といえるでしょう。
鮭節に使われるのは、産卵のために川に遡上するブナサケです。イクラや白子に脂が移行し、身の油分が落ちて美味しくないと言われているブナサケは、鮭節の素材としてピッタリ。油分が多いと、鮭節にしたときに品質が落ち、出汁も油臭くなってしまうからです。
鮭節で注目すべきは、その旨味成分です。鮭節は鰹節や鯖節に比べて、風味を感じる「遊離アミノ酸」が倍以上あります。また、旨味を感じる「グルタミン酸」や「アスパラギン酸」は3倍以上、甘味のもととなる「グリシン」や「アラニン」はホタテやエビの2倍以上と言われています。
道内では、日本三大出汁の一つでもある鰹節が製造されていません。そのため鮭節は、鰹節に変わる新たな出汁として、注目を集めています。北海道では、うどんやラーメンのスープに鮭節を使っているお店もあります。
出汁を味わう北海道の郷土料理
三平汁
画像引用元:三平汁 | 農林水産省
三平汁は、塩漬けにした鮭やニシンなどの魚と、人参や大根などの野菜と一緒に煮込んだ料理です。ポイントは、塩蔵の魚を使うこと。昆布でとった出汁をベースとし、塩漬けの魚の塩分で味をつけます。
三平汁は、地域によって使う魚が違います。また、味を整えるために加える調味料も、味噌・醤油・酒粕など様々です。
石狩鍋
画像引用元:石狩鍋 | 農林水産省
石狩鍋は、鮭で有名な石狩川の河口にある、石狩町で生まれた漁師料理です。今では、北海道を代表する郷土料理として愛されています。
石狩鍋は、昆布で出汁をとった汁で、ぶつ切りにした鮭の身とアラを、野菜と一緒に煮込みます。味噌で味を整えた後、最後にかける山椒がアクセントです。
入れる具材は、玉ねぎ、キャベツ、長ネギ、大根、しいたけ、豆腐など。石狩鍋は、たっぷりの野菜とともに、鮭の出汁を丸ごと味わえる鍋料理です。
かじか鍋
画像引用元:カジカ鍋 | クラシル
かじか鍋も、北海道の冬を代表する鍋料理の一つです。その美味しさから、「箸でつついて鍋を壊してしまう」ということから、別名「鍋こわし」とも呼ばれています。
かじかから美味しい出汁が出るので、味付けはシンプルに味噌のみでOK。大根、人参、ジャガイモといった根菜と一緒に、じっくりと煮込むのが美味しく仕上げるコツです。
かじか鍋には、脂がのった冬のカジカを、骨まで丸ごと使います。ゼラチン質の皮と濃厚な肝も、人気の理由です。
北海道の出汁おすすめ4選
ここでは、北海道産の素材にこだわったおすすめの出汁を4つご紹介します。どの出汁も、毎日の料理から、冬の鍋物まで、幅広くお使いいただける商品です。
未利用魚を加工品に活用した「しゃけをのTHE北海道だし」
画像引用元:しゃけをのTHE北海道 だし|株式会社しゃけを
「しゃけをのTHE北海道だし」は、北海道標津町にある「株式会社しゃけを」と「波心会」が共同で開発しただしです。標津産の鮭節(「華ふぶき」)・標津産のカジカ・北海道産の真昆布・国産しいたけの4種類をブレンドしています。
このだしで注目すべき素材は、カジカです。カジカは「鍋こわし」と言われるほど、美味しい出汁が取れるにもかかわらず、このようなだしに加工されることはありませんでした。
しゃけをのTHE北海道だしは、北海道産の素材を掛け合わせることで生まれた「これぞ北海道」と言える出汁です。また、種類によっては値が付かないカジカ。そんな「未利用魚」を有効活用した出汁としても注目を集めています。
北海道産鮭節の「華ふぶき」
画像引用元:手火山造り 鮭ぶし 華ふぶき|知床標津マルワ食品
知床標津マルワ食品の「華ふぶき」は、標津産のブナサケを原料とした削り節です。華ふぶきには、鰹節の本場である静岡県焼津の伝統製法、手火山造りを採用しています。
手火山造りは、直火で乾燥と焙乾(いぶす)を行う製法です。全て職人の手作業で行われるため、手間も時間もかかりますが、大量生産では実現できない風味と香ばしさを実現しています。
華ふぶきは、地元北海道のラーメン店やうどん店で、スープの出汁に使われています。ご家庭では、卵かけごはんや冷奴にかけて手軽に鮭節を楽しむことができます。鮭節の優しい美味しさをぜひご賞味ください。
北海道まるだし
画像引用元:特選 北海道まるだし|札幌商工会議所認定北のブランド
2010年の発売当初から人気なのが「北海道まるだし」です。2011年に北海道「北のブランド」に認定されており、度々金賞を受賞しています。
使われている素材は、北海道産7種類の昆布と、国産素材5種類(宗田がつお節・さば節・むろあじ節・いわし煮干し・干し椎茸)。2017年には「特選」が発売され、出汁の新たな素材として、オホーツク産のホタテ干し貝柱が加わりました。出汁の専門家監修のもと、13種類の素材を黄金比率で調合しています。
北海道まるだしのおすすめレシピはおにぎりです。まるだしの出汁パックの中身を、炊き立てご飯に混ぜ込んで握るだけで、簡単に旨味たっぷりのおにぎりが完成します。他にも、浅漬けやチャーハン、唐揚げもおすすめです。
手軽に料亭の味が出せると評判の北海道まるだしは、楽天市場やYahoo!ショッピングで購入できます。なお、現在のところ、Amazonとスーパーでの取り扱いはありません。
北海道産5種の昆布を使用した「北海道昆布職人のだし」
画像引用元:昆布職人のだし|岩本林蔵商店
岩本林蔵商店の「北海道昆布職人のだし」には、個性豊かな北海道産の昆布が、5種類使われています。その他に、煮干しやしいたけをはじめとする、5種類の国産素材をブレンドしています。
岩本林蔵商店は、札幌市中央卸売市場に隣接しています。毎朝市場に出向き、確かな目で厳選した素材を自社工場で加工しているため、商品の品質と美味しさに間違いはないでしょう。
北海道昆布職人のだしは、出汁パックになっているので、使い方も簡単です。おすすめレシピは、炊き込みご飯。味付けは、出汁パックの中身を出して入れるだけです。好きな具材を一緒に炊いたり、薄口醤油を加えたりして、アレンジしてみてください。
出汁で北海道を味わおう!
北海道の出汁は昆布だけではありません。鮭節やカジカ出汁など、他の地域では味わえない、北海道ならではの素材を使った出汁は要チェックです。
この機会に、北海道の豊かな自然の恵みを、出汁で味わってみるのはいかがでしょうか。素材の旨味をじっくりと味わえる出汁があれば、毎日の料理もより一層楽しめるはずです。