標津遺跡群の見どころ・楽しみ方を紹介!日本最大の竪穴住居群の魅力は?

標津遺跡群の見どころは?1万年の歴史を巡るガイドツアーもご紹介

北海道標津町にある標津遺跡群は、縄文文化からアイヌ文化までの約1万年に及ぶ、標津の歴史を今に伝えています。遺跡群には約4,400もの竪穴住居跡が残っており、その数は日本最大規模を誇ります。

歴史的・文化的に重要な意味を持つ標津遺跡群。この記事では、そんな標津遺跡群について分かりやすく解説します。

ポー川史跡自然公園を含む、周辺の観光スポットもご紹介するのでぜひ最後までお読みください。

標津遺跡群とは

標津町ポー川史跡自然公園

画像引用元:標津遺跡群|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト

標津遺跡群は、北海道標津町にある遺跡群で、縄文時代早期からアイヌ文化期までのおよそ1万年に及ぶ人々の生活を今に伝えています。約4,400を超える竪穴式住居の跡が残っており、その数は日本最大規模です。

標津遺跡群は、「伊茶仁カリカリウス遺跡」「古道遺跡」「三本木遺跡」の3つの遺跡を合わせたものです。中でも伊茶仁カリカリウス遺跡は、遺跡群で見つかっている竪穴の半数以上を有しており、最大規模を誇ります。

標津遺跡群は、歴史的・文化的に重要な意味を持っていることから、2024年に「プロジェクト未来遺産」に登録されました。プロジェクトの詳細は以下のサイトをご覧ください。
標津遺跡群の魅力世界発信プロジェクト

標津遺跡群の特徴

標津遺跡群にはこの地域ならではの特徴があります。ここでは、標津遺跡群を知るうえでおさえておきたい4つの特徴をご紹介します。

竪穴住居跡が窪みで残っている

標津遺跡群の特徴は、竪穴住居の跡が「窪み」として残っていることです。これは、道東の寒冷な気候が有機物の分解を遅らせ、竪穴の窪みが埋まらなかったためです。

現在周辺の環境を整備し、藪に埋もれた竪穴跡が見えるように保存し、後世に伝えていく活動が行われています。

竪穴から出土する大量のサケの骨

標津遺跡群では、どの時代の竪穴からも大量の鮭の骨が見つかっていることも特徴的です。特に縄文遺跡の調査では、出土した食料の約7割を鮭が占めていました。これは、鮭を求めて集まってきた人たちが、1万年近くにわたって標津の地に暮らしていたことの証拠です。

また、約500年前のアイヌ文化期の遺跡から出土したサケ科魚類の骨をDNA鑑定したところ、秋に遡上するシロザケの骨であることも分かっています。この調査からも、秋に遡上してくる鮭を求めて人々が集まっていたことは確かです。

アイヌの伝承で「知床の沖にいるカイム(神)からの贈り物」とされていた鮭。そんな鮭は今でも標津の代表的な特産品です。

縄文時代~アイヌ文化期までの1万年の歴史

画像引用元:北海道の歴史|伊達市噴火湾文化研究所

標津遺産群では、縄文時代初期から擦文文化期、オホーツク文化期、アイヌ文化期までの約1万年の歴史を知ることができます。擦文文化、オホーツク文化、アイヌ文化は北海道にしか見られない文化です。

オホーツク文化は、5世紀ころに北の大陸から渡ってきた人々によって広がりました。クジラやシャチ、アザラシなどの海獣を獲って暮らす人々です。住居が五角形や六角形の形をしているという点もオホーツク文化の特徴です。

10世紀になると、当時北海道全域に広がっていた擦文文化とオホーツク文化が出会い、地域性の高い「トビニタイ文化」が生まれました。トビニタイ文化は、やがて擦文文化に吸収され、アイヌ文化に続いていきます。

このように標津遺跡群は、1万年という長い間、人々が同じ場所に暮らし続けた証拠なのです。

アイヌ文化のチャシ跡

標津遺跡群では、アイヌ文化期の遺跡である「チャシ」跡が見られます。チャシは聖域として築かれたのが始まりとされており、戦いのための砦や城など、時代とともに様々な意味を持っていました。

チャシは資源の監視場としての役割もあったようです。鮭が遡上し産卵する河川の中流〜上流域に築かれているチャシは、水源や鮭の遡上を監視・管理していたと思われます。

また、伊茶仁カリカリウス遺跡にあるチャシは、標津川河口近くに築かれていることから、当時の人々が河口を港として使っていたと考えられます。アイヌの人にとって、川は移動や交易のルートでもあったのです。

標津遺跡群の見どころとおすすめスポット

ここでは、標津遺跡群を構成する3つの遺跡と、周辺の観光スポットをご紹介します。

伊茶仁カリカリウス遺跡

画像引用元:伊茶仁カリカリウス遺跡|標津町公式サイト

標津丘陵地の縁辺に広がるカリカリウス遺跡は、標津遺跡群の中でも規模が最大で、2,500か所の竪穴住居の跡が発見されています。

標津川の西岸には標津湿原が、さらに西には標高20m前後の標津丘陵地が広がります。標津丘陵地の西裾には、標津湿原から流れ出たポー川が蛇行しており、北裾には伊茶仁川が流れています。

伊茶仁とはアイヌ語で「イチャン(鮭が産卵するところ)」と呼ばれ、ポー川は鮭の遡上に適していました。

【伊茶仁カリカリウス遺跡の基本情報】

所在地北海道標津郡標津町伊茶仁
お問い合わせポー川史跡自然公園
0153-82-3674
アクセス情報標津町から車で5分
(標津湿原から少し歩きます)

ポー川史跡自然公園

画像引用元:ポー川史跡自然公園|標津町公式サイト

伊茶仁カリカリウス遺跡は「ポー川史跡自然公園内」にあるため、公園内の他のスポットも一緒に巡るのがおすすめです。

公園では「北海道開拓以前の文化的景観を体験・体感できる場所」というコンセプトのもと、ビジターセンターをはじめ、各スポットで標津の1万年の歴史を体感することができます。

公園内の環境保護区域は630haと広大なため、時間に余裕をもって訪れてくださいね!

次の見出しで、公園内にある以下の5つの見どころスポットをご紹介します。

  • ビジターセンター
  • 標津湿原
  • わき水の泉
  • ミズナラの巨木
  • ヒカリゴケ

【ポー川史跡自然公園の基本情報】

所在地北海道標津郡標津町字伊茶仁2784
お問い合わせ0153-82-3674
開園時間9:00~17:00(入園は16:30まで)
開園時期4月29日~11月23日(開園期間中無休)
入園料・ビジターセンター内の利用は無料
・開拓の村・遺跡エリアの入園料は以下
一般:330円
大学生・高校生:110円
中学生以下:無料
※団体割引あり
公式サイトhttps://www.shibetsutown.jp/shisetsu/art_culture/po_river/1012/

ビジターセンター

ビジターセンター

画像引用元:ポー川史跡自然公園ビジターセンター|標津町公式サイト

ビジターセンターでは、標津町の自然・歴史・文化を紹介しています。標津町ポー川史跡自然公園や各史跡をめぐる前に、ビジターセンターで情報収集すれば、探索がより楽しくなるでしょう。

標津湿原

画像引用元:標津湿原|標津町公式サイト

標津湿原は、シャクナゲやコケモモといった、花が彩ることで、毎年春先から夏にかけて多くの観光客が訪れるスポットです。散策をする場合は、道が用意されているので、その道に沿って進むことをおすすめします。

晴れた日には、青空と湿原に広がる緑がいいコントラストになり、気持ちよく散策できます。散歩スポットとしても有名で、観光に訪れた際は、標津湿原を通って伊茶仁カリカリウス遺跡を訪れてください!

わき水の泉

わき水の泉

画像引用元:わき水の泉|標津町公式サイト

ま伊茶仁カリカリウス遺跡には2,500以上の竪穴住居群がありますが、一か所に集中して住居群があるのは、わき水が関係しています。遺跡周辺には、武佐岳の水脈から流れ出たわき水が確認でき、見つかっているスポットだけでも80か所以上あるとされています。また、武佐岳の地熱の影響もあり、水温は5度をキープしており、雪が激しく降る真冬の環境でも、川が凍結することはありません。

ミズナラの巨木

ミズナラの巨木

画像引用元:ミズナラの巨木|けさのさけ北海道標津町観光ポータルサイト

伊茶仁カリカリウス遺跡付近には、ミズナラの木が自生しています。戦争時の開拓に伴い、一時は伐採されましたが、現在でも多くのミズナラの木が残っています。

そのなかでも、見どころの一つでもある「ミズナラの巨木」。樹齢は推定500年以上とされており、その大きさから観光名所になっています。その雄大さをぜひあなたの目で確かめてみてください!

ヒカリゴケ

ヒカリゴケ

画像引用元:ヒカリゴケ|標津町公式サイト

竪穴住居群のくぼみの内部には、特定の環境でしか確認できないヒカリゴケが自生しています。

ヒカリゴケは、寒冷地に多く生息しており、道内や標高が高い山などに生えていることが多いです。ヒカリゴケは他のコケとは違って、光を強く反射する特性を持っているため、外の光を反射して黄緑色に光ります。

例年5月から10月が見頃とされており、緑色が鮮やかに光る7月が見頃のピークです。

古道遺跡

画像引用元:古道遺跡|文化遺産オンライン

古道遺跡は、標津川の左岸から標高12mほどの台地にある集落遺跡です。指定面積は約2.2haで、伊茶仁カリカリウス遺跡よりも小規模な遺跡です。

約1200年から700年前の擦文時代を中心とした集落跡で、157の竪穴住居跡と、アイヌ文化のチャシ跡が1ヶ所あります。 

【古道遺跡の基本情報】

所在地標津町標津2316~2318
営業時間24時間営業
アクセス標津町から車で5分

三本木遺跡

三本木遺跡

画像引用元:三本木遺跡|北海道縄文のまち連絡会

三本木遺跡も標津遺跡群を構成する遺跡の1つです。標津川河口の左に位置しており、標高約3mほどの砂丘上に、21の竪穴住居跡を確認できます。

【三本木遺跡の基本情報】

所在地北海道標津郡標津町北9条西2
お問い合わせポー川史跡自然公園
0153-82-3674
アクセス情報標津町より車で3分

標津遺産群を楽しめるツアー

ここでは標津遺産群をガイドつきで楽しめるツアーを3つご紹介します。五感を使って標津の歴史と自然を体感してみてください!

標津遺跡群ガイドウォーク

画像引用元:標津遺跡群ガイドウォーク|けさのさけ北海道標津町観光ポータルサイト

「標津遺跡群ガイドウォーク」は、標津湿原をガイドとともに散策できるほか、標津遺跡群の歴史的背景を知れるツアーです。

運が良ければ、北海道に生息するエゾシカやキタキツネを見ることもできるかもしれません。

国指定の天然記念物である「標津湿原」の中を歩きながら、1万年前の人々の暮らしを間近で体感することができます。

【標津遺跡群ガイドウォークの基本情報】

名称標津遺跡群ガイドウォーク
開催地標津町ポー川史跡自然公園
開催期間5~11月(9:30~・13:30~)
所要時間2.5時間
参加料金1名:4,000(税込)/名
2名以上:3,500(税込)/名
詳細https://visitshibetsu.com/activity/education/540/

原始河川ポー川カヌー体験

画像引用元:原始河川ポー川カヌー体験|けさのさけ北海道標津町観光ポータルサイト

「原始河川ポー川カヌー体験」では、手つかずの原始河川ポー川をカヌーで巡ります。事前にカヌーの乗り方のレクチャーがあるので、初めてでも安心です。

「鮭の聖地」についてのレクチャーもあり、標津の歴史を知ることもできます。

1万年前に、ここで暮らしていた人々と、秋に遡上した大量の鮭を想像しながら、カヌーを漕いでみてはいかがでしょうか!

【原始河川ポー川カヌー体験の基本情報】

名称原始河川ポー川カヌー体験
開催地標津町ポー川史跡自然公園
開催期間5~11月上旬(9:30~・13:30~)
所要時間2~2.5時間
参加料金●1〜9名/回
大人(中学生以上): 7,500円(税込)/名
小人(小学生以下): 5,500円(税込)/名
●10〜20名/回
6,500円(税込)/名
詳細https://visitshibetsu.com/activity/education/536/

ポー川一万年の源流カヌーと遺跡の森

ポー川一万年の源流カヌーと遺跡の森

画像引用元:ポー川一万年の源流カヌーと遺跡の森|けさのさけ北海道標津町観光ポータルサイト

「ポー川一万年の源流カヌーと遺跡の森」は、標津の1万年の歴史を丸ごと体験できるガイドツアーです。

ツアーには以下の4つのプログラムが含まれています。

  • 標津史跡群の出土品を見学
  • 「標津湿原」の散策
  • 「標津史跡群」の散策
  • 「ポー川」でのカヌー体験

「ミズナラの巨木」や「わき水の泉」など、先ほどご紹介したスポットがたくさん含まれているので、ガイドとともに全て巡りたいという方におすすめです。

【ポー川一万年の源流カヌーと遺跡の森の基本情報】

名称ポー川一万年の源流カヌーと遺跡の森
開催地標津町ポー川史跡自然公園
開催期間5~11月上旬(9:30~・13:30~)
所要時間3時間
参加料金●一般料金(1~9名/回)
大人(中学生以上)8,000円(税込)/名
小人(小学生以下)6,000円(税込)/名
●団体料金(10~20名まで/回)
大人(中学生以上)7,000円(税込)/名
小人(小学生以下)5,500円(税込)/名
詳細https://visitshibetsu.com/activity/heritage-of-salmon/172/

まとめ

標津遺跡群は、1万年にわたる標津の歴史を感じられる貴重な場所です。窪みとして残る住居跡や、竪穴から出土する鮭の骨など、標津遺跡群ならではの特徴が色濃く残っています。

標津を訪れる際には、標津遺跡群も旅の日程に含めてみてはいかがでしょうか。ガイドウォークやカヌー体験で、標津の歴史と自然を全身で体感してみてください!

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